金麦スタイル トップ > 金麦セレクション

曲がる食器

金麦セレクション

金麦セレクション 全国各地にある名産品の数々。毎日の生活を豊かにしてくれる逸品を、その地の歴史と風土を交えて紹介します。

お酒

お客様は20歳以上ですか?

  • はい
  • いいえ
 

「100年間で培った伝統と技術を活かし現代にあったモノ作りをしていきたい」

  • 400年の歴史を誇る銅器の町

    古くから銅器の名産地として知られる富山県・高岡市。400年ほど前の藩主、前田利長が高岡を開町したときに、町の繁栄のために7人の鋳物いもの職人を招いたことがはじまりと言われています。現在、日本国内における高岡市の銅器の生産量は実に9割以上。釣鐘のような大物から小さな銅像に至るまで、実は様々な場所で私たちの目に触れているのです。

  • 高岡の銅器産業の起点となったのが金屋町です。町からやや離れた川向こうにあるのは、火災から町を守るための知恵と言われており、千本格子の木枠や銅を使った軒など当時の面影が色濃く残っています。ちなみにこの頃の税金は間口の広さによってかけられたため、どの家屋も間口の何倍もの奥行きがあるのが特徴です。

  • そんな高岡市で100年の歴史を持つ老舗鋳物屋が「能作」です。青銅や真鍮を使ったテーブルウェアやインテリア小物などを手掛けおり、中でも「曲がる食器」は、食器の概念を覆した商品です。しかし、「曲がる」と「食器」という交わることのない2つのキーワードは、一体どのようにして結びついていったのでしょうか。

  • 欠点を長所にする逆転の発想

    「斜陽だった高岡の産業を活性化し、それに携わる職人の地位を少しでも向上させたかったんです」。そう話してくれたのは4代目代表・能作克治さん。美しいラインと響きをもつ真鍮の風鈴やハンドベルを発売してすでに少しずつ売上を伸ばし始めていましたが、「今の技術を活かしつつ、これまでにない斬新な商品は作れないものか」と思案していたのです。

  • そこで思いついたのがスズ100%の食器作りでした。スズは抗菌作用があるのでお皿やコップなどの食器類に最適で、さらに熱伝導率がよいため冷たい飲み物をいれたときの保冷力が高いというメリットがあるからです。しかし、そのアイデアを職人たちに伝えると「考えられない」と難色を示されました。通常、スズは銅と混ぜて青銅を作るときなどに使われる素材であり、それ単体では硬度が低すぎて手でも容易に曲がってしまうからです。過去、どのメーカーもスズ100%の食器を作らなかったのは、この“曲がる”という欠点があったからに他なりません。

  • 幾度となく続いた話し合いの結果、なんとか職人たちを説得し製品化してみたものの、やはりしばらくは「曲がる=欠点」と思っていた能作さん。ところがあるお客様から「焼き物のような温かさを感じますね」と言われ、さらにデザイナーに見せたときも「面白いじゃないですか。むしろ曲げて使うことの楽しさを前面に打ち出してみては?」と言われたそう。「曲がるのを欠点ではなく、長所として捉える」という逆転の発想が能作さんの胸に響いたのでした。

  • 「飲み口を曲げれば口あたりも変わり、いつもと違ったお酒の楽しみ方ができる。毎日の料理も食器の形状を変えればまた新しい表情を見せてくれる――」。能作さんは曲がることで広がる食生活の楽しさを知ってもらおうと、まずは社内だけでなく工業デザイナーともコラボをして商品ラインナップの拡充をはかりました。さらには国内だけでなくパリで開催されるインテリアの見本市「メゾン・エ・オブジェ」にも出展。海外でも「こんな食器は今まで見たことがない」と絶賛の声をもらったのです。やがて唯一無二の曲がる食器は、曲がるという斬新さに金属ながらもどこかぬくもりのあるデザインも手伝って、高い評価を得るようになりました。

  • もちろんスズ100%の食器作りは、誰でも簡単にできるものではありません。これまで培ってきた鋳造ちゅうぞうの技術があったからこそ商品化することができたのです。鋳造とは溶かした金属を型に流し込む製造方法のことで、流し込むための型は鋳型いがたと呼ばれます。「製品をひとつ作るために、毎回この鋳型作りを1から行わなくてはいけないのです」と能作さんは言います。スズの流し込みを終えると、作った鋳型の中から製品を取り出さなくてはいけません。しかし、型自体は砂を固めて作られているため、製品ができるとそのたびに型を壊す必要があり再利用はできないのです。

  • 伝統を革新に変える職人技

    鋳型作りには、金属で出来た型枠、原型と呼ばれる部品、そして専用の砂が使われ、型枠に隙間なく砂を詰めて圧をかけることで型をとります。「温度や湿度など様々な要素が絡んでくるので、鋳型作りはこれをこうすれば正解、というのはないんです」。もちろん鋳型作りはひとつひとつが職人の手作業によるもの。曲がる食器の柔らかみのあるラインは、こうした職人たちの緻密な作業の上に成り立っているのです。

  • まるで砂と対話しているように作業をすすめる職人たち。鋭い眼差しが作業の重要さを物語っています。鋳型作りで商品の出来がほぼ決まるので一瞬たりとも気が抜けません。「スズを流し込むための隙間はわずか2~3mm。柔らかい素材なので修正がほとんどきかないのです」。鋳型が完成したら隙間に流し込むためのスズを溶解する作業が続きます。

  • スズは他の金属と違って融点が230度と低いため、鍋にいれてガスコンロで溶かします。液状になったスズを流し込むのは二人がかり。型が膨張しないよう、上から厚い鉄板で押さえつけています。充分に冷ましてから鋳型を崩すと、鮮やかな銀色をした製品が姿を現しました。ここから切り出しと研磨が行われようやく製品の完成です。

  • 完成した製品は砂型ならではの温かみのある手触り。力を加えるとゆっくりとカタチを変えながら、ティンクライ(Tin cry。Tinとはスズの英語名)と呼ばれる独特の金属音がわずかに響きます。スズは素材自体がもつ抗菌作用によって水やお酒の味わいを深くすると言われているのも、特徴のひとつ。使う人によって異なる表情を見せる曲がる食器は、能作さんのアイデアと100年の技術が生み出した逸品なのです。

 

高岡の伝統産業を現代に

能作の曲がる食器はスズ100%。ラインナップはお猪口にコップ、鍋敷きにお皿と幅広く、そのどれもにこれまで培ってきた100年の歴史と技術が注がれています。手作業ならではの温かみのある手触りと、“食器が曲がる”という新しい感覚を楽しんでみてはいかがでしょう。

<お取り寄せ連絡先>
〒939-1118 富山県高岡市戸出栄町46-1 TEL 0766-63-5080 Fax 0766-63-5510
http://www.nousaku.co.jp/

金麦セレクション Back number 過去の全国の名産はこちらから 金麦セレクション一覧へ

ページの先頭へ